目先のPVや収益に狂わされない『ウェブ時代の書き手に必要な「3つの逆転」』
ウェブ時代の書き手に必要な「3つの逆転」 ?多様化する「書く」ための戦略? (群雛文庫)
- 作者: 堀正岳
- 出版社/メーカー: NPO法人日本独立作家同盟
- 発売日: 2016/04/14
- メディア: Kindle版
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個性や何かに対する愛を捨てて、埋没してしまったブロガー多い。そうでないとしても、昔とどこか変わってしまった人も多い。
もしかしたら、自分もその一人かもしれない。そんな一抹の不安を感じながら、本書籍を読んだ。
書き手、ブロガーにもオススメ
この書籍では『3つの逆転』と題して、書き手がどのような工夫をしていかなければ読者がついてこないのかを書いている。
確かに『3つの逆転』ではあるが『第一の逆転:読者を減らす』ここに軸があり、書き手はどのように工夫を凝らし、洗練された読者を集めていくのかといったこにフォーカスされている。
インディーズ作家へ送るエールと内容紹介に書かれているが、著者はライフハックやガジェット、知的生産などのトピックをメインに扱うブロガーである「Lifehacking.jp」の堀正岳さんが執筆されたもので、ブロガーにも読んでもらいたい一冊だ。
実際、読んでみて私も興味深いところが多かった。
少しの需要とニッチな市場
読者を生み出すには普遍的な価値を生み出さなければならず、誰にでも価値があるものは価値でなくなり、コモディティー化するとして以下のような話をしている。
それならば、むしろ読者を絞りこむほうが、互いの関係は密になりますし、生み出すべきコンテンツの方向性も先鋭化します。
例えば『日常生活に役立つ、雑貨まとめ』という記事を書いたとしよう。この記事が工夫をこらされていて、どんどんSNSで拡散されていったとしても、そこに読者が生まれ、度々自分のブログを訪問してきてくれるだろうか。
多くの場合は、その一瞬だけで再びそのブログを訪れることはほぼ皆無だろう。
そう分かったとしても、このスパイラルを体感するとブロガーとしては何度でも繰り返したくなり、拡散されやすい記事を量産することになる。
読者を減らし、よりコンテンツの密度を高めて、自分やサイトにブランディングをほどこし、そのブランドに人を集めていくことが必要になる。一度こんなことを考えてみては、結局目先のPVや収益に狂わされている人も少なくない。
それもそのはずで、ものすごく時間をかけてニッチな市場の読者を集めていくということを意味しているからだ。
ジャンルとジャンルの越境
ジャンルに向けて書くのではなく、異なるジャンルを越境できるかが大事。また、相反するジャンルをテーマにすることで、その両者をつなげることができると書いているが、そのようなコンテンツを作るのはかなり難しい。
ただ例に意識を取られているだけで、こう考えてみると楽かもしれない。ガジェットのレビューや情報を書くブログは腐るほどあっても、ガジェットと何かを組み合わせたらどうだろうか。
相反するとはいえないかもしれないが、何かを組み合わせることでより濃密なコンテンツが書けるうえに、コンテンツを持って様々なジャンルに越境すれば、目新しさや稀有な存在として注目を集められるだろう。
実際のところ、ブログ界隈でも絵が描けることで注目され、本の表紙やSNSに使われるアイコンを描いている人もいたりするくらいだ。この場合、書き手ではないが、界隈において人とは違う何かを持つことが大事なのは間違いない。
自分と読者を育てる
似たようなジャンルを書いている人のなかに埋没しないこと、自分の偏愛や専門性を武器に読者をゆっくりと育ててゆくこと、そして、あえて価値のあるものを無料で提供し続けることで読者が喜んで買いたくなるようなコンテンツに向けての道のりを作ってゆくこと。
思えば、偏愛や専門性があったからこそ多くの読者を獲得したブログは多い。
しかし、それだけでは生きていけなくなっているのがブログやメディア、もしくはセルフパブリッシングの現状だろう。確実に価値を高めていくには、それなりの準備と分析が必要かもしれない。
また、価値あるものを無料で提供することは、読者だけでなく、巡り巡って編集者がその才能や知見を買いたくなるかもしれない。
書かれていることすべてが書き手にとって重要であり、ものすごく長い道のりであることを示唆しているが、それが実を結んだとき、書き手として長生きすることができるかもしれない。
忘れられない書き手になるためには、そうした努力が必要なのだ。