偏差値ふぉーてぃー

教科書捨ててブログしてる偏差値40台の高校に通う高校生のブログ。

大衆受けした「君の名は。」と、これまでの新海誠

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新海誠の新たな挑戦となった作品

今作は、これまでの新海誠作品と大きく異なっていることは間違いない。

君の名は。』は僕の名前を知らない人に届けたかった。まずはそれが第一。僕のことを知っている方もいるけれど、そうじゃない人のほうが圧倒的に多いわけで。この映画を通して僕の名を知って欲しいのと、こんなに新鮮な表現があること、アニメーションでドキドキわくわくする気持ちを味わって欲しいと思っています。

「君の名は。」新海誠監督インタビュー 40代の仕事としてスタートラインにある映画になった | アニメ!アニメ!

インタビューでも語っているように過去作と比べて、より大衆向けにエンターテインメント性が強い作品だということがわかる。

秒速5センチメートル」の感想といえば、大人になった貴樹と明里がすれ違い、振り替えると明里の姿が居ないという鬱エンドがすぐに思いつくだろう。

今作品では、物語の軸になる男女の入れ替わりというトリックというのが印象的だ。また、奥村先輩というキャラクターの存在や、口噛み酒にまつわるシーンなどドキッとさせられるようなカットが目立つ。

そして、最後はまさかの展開。秒速5センチメートルで鬱アニメだと判定し、見なくなった層もグッとキテしまうようなラストだ。

これまでの新海誠作品では見られることのなかった作品だろう。

リアルからエンターテイメントへ

 地上と宇宙に離れたミカコとノボルは携帯メールで連絡をとりあうが、リシテア号が木星エウロパ基地を経由して更に太陽系の深淵に向かうにつれて、メールの電波の往復にかかる時間は開いていく。ノボルはミカコからのメールだけを心待ちにしている自身に苛立ちつつも、日常生活を送っていく。やがてリシテア艦隊はワープを行い、ミカコとノボルの時間のズレは決定的なものへとなっていく……

Other voices-遠い声- » 「ほしのこえ」

 「ほしのこえ」といえば新海誠が注目を浴びることになった自主制作アニメーションだ。SFロボットアニメ作品でありながら、随所にリアルさを感じさせるシーンが幾つかある。

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季節が一回りして、また夏が来た。
ミカコからのメールを待つのをやめたのは、去年の冬だ。
結局、もう一年もミカコからメールは届いていない。

このシーン、他の女の子と下校をしているような描写がある。非現実というSFに対して、どれだけ相手を想っていても結局は心変わりしてしまったりという現実を感じるシーンはとても胸にぐさっと来るものがある。

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ねえ、私たちは、宇宙と地上にひきさかれる、恋人みたいだね

おきまりの恋愛ドラマに宇宙と地上という大きな障害、それを乗り越えられるというご都合展開ではなく、何もできない無力さを感じてしまうノボル。人生の中で、そういう場面に幾つか出くわした時、ヒーローでもない自分は結局無力なんだってことを感じてしまう一瞬もある。

筆者は、そういう瞬間を思い出させられる描写に魅せられた。

僕らはいつまでたっても、青春アニメの王道のように純愛を成就させることなど一切できず、喪失感や虚無感を持っているんだと、そう言ってくれる作品たちはどこか悲しげで安心感がある。

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いつまで理想を追い求めても、待っている現実と向き合わなければならない。そこから少しづつ人間というのは成長していくのだろう。

秒速5センチメートル」ラストシーンで貴樹があかりとすれ違い、ふと笑みがこぼれたのも、ようやく次のステージへ進めそうだという気持ちになれたからだろう。

もう一つ、『秒速』には色んな反省があって。もっと「伝わるように」作らなくてはならないと思ったんです。あの作品を観て、「ご飯を食べられなくなった」といった感想もいただくんですが(笑)。自分としては、励ますような気持ちで作ったつもりなんです。

「『秒速』を観てご飯が食べられなくなった」と言われます――新海誠監督が語る最新作『言の葉の庭』(後編) | オタ女

多くのユーザーからバッドエンドだというふうに言われるが、これは決して不本意なものではなく、本意としてこうなったのでしょう。複雑な社会の中で、必ずしも純愛だけが幸せの全てではないと。

君の名は。」はオタクから大衆へ

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しかし「君の名は。」ではどうだっただろう。

これまでの作品を覆すような結果になった。しかし、これもまた監督の本意と、そして進化なのだろう。

これまでは、物語を現実らしさで固めてきた新海が、都会に住む高校生と、田舎に住む高校生という現実に、非現実的要素である、男女の入れ替わり。物語の中で目新しいことが起きない秒速などの作品とは異なり、テンポよく動き、コミカルなシーンもある。

秒速のような何も変わらない日常から心情描写を読み取るのは、そのようなあるいはそれに近い経験をしてきたユーザーでないと難しかったが、一方で今作は動きや発言で素直に心情描写を読み取れる。

まさしく、笑いあり涙ありのエンターテイメント。

これまでの新海誠から、一気に吹っ切れた作品になった。万人受けしない作品を作ってきた新海誠が、より大衆をターゲットに狙ってきたのだと考えると、嬉しくどこか切ない。

P.S.

音楽はRADWINPSもいいですが、天門さんの曲また聴きたいなぁ。